警察官の階級について徹底解説|役割や昇任方法も紹介

安齋

警察官採用試験の合格に特化したオンラインスクール「警志塾」を運営している安齋です!

警察官として働くうえで、「階級」は自分の仕事内容を決めるだけでなく、人生設計まで変えるほどの大きな要素です。

将来、どのくらいの階級まで上げられそうなのか、階級を上げるのにどのくらい時間がかかるのか、不安になる人も多いはずです。

そこで今回の記事では、警察官の階級について、それぞれの階級の業務内容や役割、昇任する方法など、さまざまな面から解説していきます。

今のうちからキャリア形成をしっかりしておきたい、という人はぜひ最後までご覧ください。

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目次

警察官の階級とそれぞれの役割

警察官の階級は、警察法によって定められています。具体的な階級と、それぞれの主な役割などは以下の表を参考にしてください。

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階級階級章主な役割公務員の種類
巡査新人や現場の最前線で活動する警察官。交番勤務やパトロールなど。地方公務員
巡査長(※)巡査の中で上位の扱い。昇任ではなく勤務成績による称号。地方公務員
巡査部長警部補の補助的な役割を担う。後輩警察官の指導も担当。地方公務員or国家公務員
警部補小隊長や係長クラス。現場指揮や捜査指導を行う。地方公務員or国家公務員
警部課長や課長代理として現場の管理・指導を担当。地方公務員or国家公務員
警視警察署の署長・副署長や本部課長などの管理職。地方公務員or国家公務員
警視正本部課長や主要警察署の署長など。組織運営を担う中核職。地方公務員or国家公務員
警視長警視長の部長や警察本部の本部長を務める。国家公務員
警視監警察庁の次長や局長、警視庁の副総監など。広域的な指揮監督。国家公務員
警視総監警視庁のトップ。東京都の治安維持を統括する。国家公務員
※「巡査長」は正式な階級ではなく、便宜的な称号であり、階級章も独自のものになります。
画像引用:階級章 かいきゅうしょう

警視正以上の階級は基本的に、いわゆる「キャリア組」である国家公務員しかなれず、地方公務員である一般的な警察官のほとんどは警視、できても警視正までしかなれません。(ごく一部のみ警視長まで昇任可能)

それぞれの階級がどのような業務・役割を担っているのか、詳しく解説していきます。

安齋

自分のやりたい業務がどの階級なら出来るのかを確認しておきましょう!

巡査

各都道府県の警察官採用試験に合格した人は全員、もっとも低い階級である「巡査」からスタートします。

東京都総務局が令和5年に実施した調査「等級及び職制上の段階ごとの職員数」によると、同年4月1日現在、警視庁の警察官の約35%が巡査であることがわかりました。他の階級と比較してもっとも人数が多いのが特徴です。

巡査は警察署、もしくは警察本部に配属され、交番や駐在所で勤務することになります。管轄内で起きた事件の捜査や、それに関する事務、地域のパトロール等が主な業務です。

大卒程度の採用者は2年、短大卒程度の採用者は3年、高卒程度の採用者は4年以上の勤務実績を有していれば、巡査部長への昇任試験を受ける資格が得られます。

巡査長

「巡査長」は、警察法によって定義されている正式な階級ではなく、「巡査長に関する規則」によって規定されている階級です。

(この規則の目的)
第一条この規則は、勤務成績が優良であり、かつ、実務経験が豊富な巡査の能力および経験を活用して、都道府県警察における指導体制の強化を図るため、巡査長を置く基準その他必要な事項を定めることを目的とする。
引用:巡査長に関する規則 | e-Gov法令検索

同規則の第四条によると、以下の条件を満たす人が巡査長になれるようです。

巡査長になるための条件
  • 巡査としての勤務年数が、大卒者は2年、短大卒者は4年、高卒者は6年にたっしており、指導力を有している
  • 巡査部長昇任試験に合格しているが事例を受けていない、もしくは勤務成績が優秀であって優れた指導力を有している

基本的な業務は巡査と同じですが、巡査の指導係も同時に担います。

巡査部長

いわゆる「準キャリア組」である、国家公務員(一般職)試験の合格者が警察官になる場合、階級は「巡査部長」からスタートします。

警視庁の中では、約30%の警察官がこの巡査部長となっているそうです。

役割は警察署の主任で、下級の職員の指導を務めたり、上司である警部補の補佐もしたりします。

巡査部長として、大卒程度の採用者は1年、短大卒程度の採用者は2年、高卒程度の採用者は3年以上の勤務経験を有していれば、警部補への昇任試験を受ける資格が得られます。

ちなみに、ドラマ『踊る大捜査線』の主人公・青島俊作の階級は、巡査部長です。

警部補

いわゆる「キャリア組」である、国家公務員(総合職)試験の合格者が警察官になる場合、階級は「警部補」からスタートします。

役割は警察署の係長で、いわゆる「ノンキャリア組」では比較的高めの階級です。

実務でチームリーダーとして現場責任を負ったり、機動隊で小隊長を務めたりもします。

警部補として4年以上の勤務実績を有していれば、学歴に関係なく警部への昇任試験を受ける資格が得られます。

ドラマ『古畑任三郎』の主人公・古畑任三郎の階級は、警部補です。

警部

「警部」は警察署では課長、本部では課長補佐のポジションに位置しており、警視庁の中では6%しか存在していません。

逮捕状の請求が可能で、現場の第一線で活躍するというよりも、現場指揮を執る立場です。

ノンキャリア組で警部にまでなれば、出世頭と言ってもよいでしょう。

警部として6年以上の勤務実績を有していれば、警視へ昇任するための選考を受ける資格が得られます。(必要であれば昇任試験も併せて実施)

アニメ『ルパン三世』の銭形警部や、ドラマ『相棒シリーズ』の主人公・杉下右京の階級は、警部です。

警視

「警視」は、警察署では署長、本部では課長を務め、警視庁内に2.7%しかいない階級です。

警視以上の階級になると、警察学校長に任命されることも。

基本的に昇任試験ではなく、「選考」というプロセスを踏んで警視へと昇任します。

選考については、本記事内の「昇任する方法とプロセスを紹介」の欄にて詳しく解説します。

警視正

「警視正」以上の階級は、国家公務員(地方警務官)のキャリア組にしかなれず、仮にノンキャリア組である地方公務員が昇任した場合でも、国家公務員扱いに変わります。

警察本部の部長を務め、キャリア採用で15年ほど、準キャリア採用で25年ほどで昇任するといわれています。

こちらも昇任するのに「選考」が必要です。

ドラマ『踊る大捜査線』の登場人物でもあり、スピンオフ作品映画『交渉人 真下正義』の主人公・真下正義の階級は、警視正です。

警視長

「警視長」はノンキャリア組の最高位ですが、警視庁に入庁してもごく少数の人しかなれず、県警だと1名しかなれない階級です。

キャリア組だとしても、昇任するまでに採用から20年以上かかりますし、成績が優秀でないと選考を受けられません。

全国の定員は594人で、警察本部の本部長や、警視庁の部長、警察庁の課長などを務めます。

警視監

「警視監」まで高位の階級になると、準キャリアでも昇任する人は限られており、キャリア採用でなければなるのは非常に大変です。

全国の定員は38人とごく少人数しかおらず、警視庁では副総監、警察庁では次長や官房長を務めます。

映画『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』における室井慎次の階級が、警視監です。

警視総監

「警視総監」は警察の中で最高位の階級で、警視庁の長でもあり、全国に1人しかいません。

警視総監に任命されるには、国家公安委員会からの選考、東京都公安委員会および内閣総理大臣からの昇任が必要です。

警視庁・全国の警察本部の事務を統括し、全警察職員の監督をします。

階級別の平均年収

警察官は、階級によっても年収に差があります。階級別の平均年収は、以下の表を参考にしてください。

年代平均給与月額平均年収階級
20代約225,037円~約288,266円約3,701,859円~約4,741,976円巡査/巡査長/巡査部長
30代約324,596円~約358,111円約5,339,604円~約5,890,926円警部補/警部
40代約384,979円~約417,404円約6,332,905円~約6,866,296円警部/警視
50代約427,002円~約431,180円約7,024,183円~約7,092,911円警視/警視正/警視長
参考:令和5年4月1日地方公務員給与実態調査結果

上記はあくまで平均値であり、都道府県や年齢によっても異なります。ただ、階級が上がれば上がるほど年収が高くなるのは事実です。

警察官の年収は別表第四 公安職俸給表(第六条関係)によって定められています。階級だけでなく、勤続年数なども給料に反映されることを理解しておきましょう。

安齋

手当によっても年収に差が生じるため、大体の目安として覚えておくのがおすすめです!

キャリアとノンキャリアとは?

警察官のキャリアを考える上では、階級以外にも覚えておくべきことがあります。それは「キャリア」と「ノンキャリア」です。キャリアの方がより上の階級まで昇進できるため、警視正以上の階級を目指す方は「キャリア組」に入る必要があります。

キャリアとノンキャリアは、やりたいことや何を目指すのかによってどちらがおすすめかが異なります。

また、目指す方に合った採用試験を受験しなければいけないため、警察官になる前に理解しておくことが大切です。

安齋

キャリアとノンキャリアの何が違うのかを明確に理解しておきましょう!

地方公務員と国家公務員の違い

警察官になるためには、各都道府県の警察官採用試験に合格する以外にも方法があります。それは、国家公務員試験に合格し警察庁に入社する方法です。

一般的に、国家公務員に合格するのが「キャリア組」であり、各都道府県の警察官採用試験に合格する地方公務員は「ノンキャリア組」と呼ばれています。

警察庁に入社した場合でも一般的な警察官として働きますが、階級が「警部補」からのスタートになります。巡査からスタートするノンキャリア組よりも、かなり早く出世が可能です。

また、地方公務員として警察官になった場合、どんなに出世しても警視正までが限界だということを理解しておきましょう。

出世コースに乗れるのはどっち?

警察官として出世したいと考えているなら、キャリア組として採用される必要があります。「警部補」からスタートすることで、警部以降へも同世代より格段に早く昇進できます。

また、上位の階級になればなるほど、昇任試験に合格すれば昇進できるという単純なものでもありません。勤務成績や上司からの推薦、空席状況などを鑑みて判断されます。

注意点として、出世すればするほど現場で活躍するような業務ではなく、組織全体の指揮や管理がメインの業務となります。そのため、警察官になってやりたい業務が何なのかを明確にしておくことが大切です。

昇任する方法・プロセスを詳しく紹介

警察官が階級を上げるためには、「昇任試験」と「選考」の2つの方法があります。

昇任試験があるのは「警部」までで、「警視」以上の階級になるには、選考を受けなければなりません。

それぞれどのようなプロセスを踏んで昇任することになるのか、詳しく解説していきます。

安齋

昇進に興味のある方は、必ず確認しておきましょう!

昇任試験を受けて合格する

昇任試験を受けるには、まずは階級別に設けられた基準をクリアしなければなりません。基本は必要な勤続年数をクリアすればいいのですが、自身の採用区分ごとに必要な勤続年数が異なるため、注意しましょう。

柔道や剣道などの段位が高い場合や、逮捕術・拳銃操法に優れる場合など、特殊な技能を持っている場合も、基準を満たしたことになります。

昇任試験は年に一度開催され、一般常識・警察法規・警察実務等についての筆記試験、論文試験、教練・点検・零式・逮捕術等の術科、面接がおこなわれます。

難易度は非常に高く、階級が上がるごとに落ちてしまう人が増え、昇任自体を諦めてしまう人が出てくるほどです。

昇任試験は何年目から受けられる?

警察官の昇任試験とは、警察官がより高い階級に昇格するに値するかどうかを確かめる試験のことです。

警察学校を卒業した後は、全員が巡査として働きます。大卒者は採用後概ね2年、大卒以外の者は採用後概ね4年で昇任試験を受けることが可能です。

引用:昇任制度(キャリアステップ)

つまり、地方公務員の警察官として少しでも早く昇任したいなら、大卒区分での受験をおすすめします。昇任後の階級で指定の期間勤務すると、再び昇任試験を受けられるようになります。

選考を受ける

「選考」は、基準となる勤続年数をクリアすることと、上司からの推薦が必要です。

成績が優秀な順に受けることができ、勤務経歴・勤務実績を総合的に考慮して評価されます。

選考を受けるところまで昇任できるのは、ほとんどがキャリア組です。

警察官として出生してきたいなら、国家公務員としてキャリア採用を目指すのが得策でしょう。

階級を上げるメリット

警察官として階級を上げるメリットは、以下の2つです。

警察官として階級を上げるメリット
  • 月収や年収アップに繋がる
  • 幅広い業務に対応できるようになる

階級を上げることで、金銭的なメリットや業務内容の幅が広がるのが特徴です。階級を上げるには昇任試験を受験しなければいけませんが、適切な対策をしていれば問題なく昇進できることも多いです。

また、警察官としてキャリアアップを目指す方も階級を上げることをおすすめします。

安齋

階級を上げることで得られるメリットはたくさんあるんです!

月収や年収アップに繋がる

警察官として階級を上げる1つ目のメリットは、月収や年収アップに繋がることです。「階級別の平均年収」でも解説しましたが、警察官の年収は勤務年数や階級が上がるほど増加します。

警察官として年収を上げたいと考えているなら、階級を上げるのが最も確実な方法です。

また、キャリア組として採用されることで高い階級からスタートできるため、警察庁の警察官になるのもおすすめです。どんな採用方法にせよ、階級を上げることで月収や年収アップに繋がることを理解しておきましょう。

幅広い業務に対応できるようになる

警察官として階級を上げる2つ目のメリットは、幅広い業務に対応できるようになることです。例えば、警察官の階級で下から2つの「巡査」と「巡査長」は、主に現場で活動するのがメインとなります。

「警部補」や「警部」は、中級幹部として現場の責任や担当部署の統括などを行うのがメインです。

「警視」以上の階級になると、現場での活動ではなく各警察署の署長や本部長など、全体を管理・統括する立場となります。

階級が上がれば上がるほど、より幅広い業務ができるようになり、警察官としての経験や知識も豊富になります。

階級を上げるデメリット

警察官として階級を上げるデメリットは、以下の2つです。

警察官として階級を上げるデメリット
  • 昇任試験の勉強が必要になる
  • 昇任試験を受けても合格できるわけではない

自分自身が警察官としてどのように働きたいかによって、目指すべき階級は異なります。例えば、現場の最前線で働きたい方が昇進すると、現場には出られなくなってしまうため注意が必要です。

やみくもに階級を上げるのではなく、目的達成のために階級を上げるべきかどうかを判断することが大切です。

安齋

階級はただ単に上げれば良いというわけではないんです!

昇任試験の勉強が必要になる

警察官として階級を上げる1つ目のデメリットは、昇任試験の勉強が必要になることです。昇任試験では、以下のような試験を受ける必要があります。

昇任試験で出題される試験
  • 一般常識
  • 警察法規
  • 警察実務等についての筆記試験
  • 論文試験
  • 教練
  • 点検
  • 零式
  • 逮捕術等の術科
  • 面接

上記全ての対策を普段の業務をこなしながら対策しなければいけないため、勉強時間の確保だけでも一苦労です。

また、昇任試験は年に一度しか開催されないため、今年不合格になれば一年間は昇進できません。勉強が無駄になることはありませんが、不合格になっても来年の試験までモチベーションを保てる保証が無い事がデメリットとなります。

昇任試験を受けても合格できるわけではない

警察官として階級を上げる2つ目のデメリットは、昇任試験を受けても合格できるわけではないことです。巡査から巡査長、巡査長から巡査部長などは、勤務年数や勤務態度、成績次第では比較的早い段階から昇進できます。

しかし、警部補以上になると年数が必要になるだけでなく、人数が限られるようになっていきます。つまり、成績が優秀であっても空きが出なければ、昇進できない可能性が高いです。

また、上司からの推薦が必要になる場合もあるため、必ずしも昇任試験を受けても合格できるわけではないことを理解しておきましょう。

まとめ

警察官として働くうえで「階級」は、ただ単に仕事内容を分けるだけではなく、その人の人生に強く影響を及ぼします。

もし今、あなた自身が「警視庁採用試験を受験して警察になりたい」と考えているのと同時に、「できるだけ早く出世したい」とも考えているのなら、目指す警察官像に合った採用区分で受験することが大切です。

このように、将来のビジョンをはっきりしておくことは、今後の身の振り方や努力の仕方、目指す方向まではっきりとさせます。

この記事を読んだことをきっかけに、今後の人生をより良くするためにも、ぜひもう一度自身のキャリア形成について、深く考えてみてはいかがでしょうか。

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