警察官として働くうえで、「階級」は自分の仕事内容を決めるだけでなく、人生設計まで変えるほどの大きな要素です。
将来、どのくらいの階級まで上げられそうなのか、階級を上げるのにどのくらい時間がかかるのか、不安になる人も多いはずです。
そこで今回の記事では、警察官の階級について、それぞれの階級の業務内容や役割、昇任する方法など、さまざまな面から解説していきます。
今のうちからキャリア形成をしっかりしておきたい、という人はぜひ最後までご覧ください。
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警察官の階級とそれぞれの役割を紹介
警察官の階級は、警察法によって以下の9つに分けられています。番号順に階級が高くなっていき、1.の巡査がもっとも低い階級で、9.の警視総監がもっとも高い階級です。
- 巡査
- 巡査部長
- 警部補
- 警部
- 警視
- 警視正
- 警視長
- 警視監
- 警視総監
法律によって定義されていませんが、巡査と巡査部長の間に、「巡査長」という階級的職位(階級章も存在している)があります。
警視正以上の階級は基本的に、いわゆる「キャリア組」である国家公務員しかなれず、地方公務員である一般的な警察官のほとんどは警視、できても警視正までしかなれません。(ごく一部のみ警視長まで昇任可能)
それぞれの階級がどのような業務・役割を担っているのか、詳しく解説していきます。
巡査
各都道府県の警察官採用試験に合格した人は全員、もっとも低い階級である「巡査」からスタートします。
東京都総務局が令和5年に実施した調査「等級及び職制上の段階ごとの職員数」によると、同年4月1日現在、警視庁の警察官の約35%が巡査であることがわかりました。他の階級と比較してもっとも人数が多いのが特徴です。
巡査は警察署、もしくは警察本部に配属され、交番や駐在所で勤務することになります。管轄内で起きた事件の捜査や、それに関する事務、地域のパトロール等が主な業務です。
大卒程度の採用者は2年、短大卒程度の採用者は3年、高卒程度の採用者は4年以上の勤務実績を有していれば、巡査部長への昇任試験を受ける資格が得られます。
巡査長
「巡査長」は、警察法によって定義されている正式な階級ではなく、「巡査長に関する規則」によって規定されている階級です。
(この規則の目的)
第一条この規則は、勤務成績が優良であり、かつ、実務経験が豊富な巡査の能力および経験を活用して、都道府県警察における指導体制の強化を図るため、巡査長を置く基準その他必要な事項を定めることを目的とする。
引用:巡査長に関する規則 | e-Gov法令検索
同規則の第四条によると、以下の条件を満たす人が巡査長になれるようです。
- 巡査としての勤務年数が、大卒者は2年、短大卒者は4年、高卒者は6年にたっしており、指導力を有している
- 巡査部長昇任試験に合格しているが事例を受けていない、もしくは勤務成績が優秀であって優れた指導力を有している
基本的な業務は巡査と同じですが、巡査の指導係も同時に担います。
巡査部長
いわゆる「準キャリア組」である、国家公務員(一般職)試験の合格者が警察官になる場合、階級は「巡査部長」からスタートします。
警視庁の中では、約30%の警察官がこの巡査部長となっているそうです。
役割は警察署の主任で、下級の職員の指導を務めたり、上司である警部補の補佐もしたりします。
巡査部長として、大卒程度の採用者は1年、短大卒程度の採用者は2年、高卒程度の採用者は3年以上の勤務経験を有していれば、警部補への昇任試験を受ける資格が得られます。
ちなみに、ドラマ『踊る大捜査線』の主人公・青島俊作の階級は、巡査部長です。
警部補
いわゆる「キャリア組」である、国家公務員(総合職)試験の合格者が警察官になる場合、階級は「警部補」からスタートします。
役割は警察署の係長で、いわゆる「ノンキャリア組」では比較的高めの階級です。
実務でチームリーダーとして現場責任を負ったり、機動隊で小隊長を務めたりもします。
警部補として4年以上の勤務実績を有していれば、学歴に関係なく警部への昇任試験を受ける資格が得られます。
ドラマ『古畑任三郎』の主人公・古畑任三郎の階級は、警部補です。
警部
「警部」は警察署では課長、本部では課長補佐のポジションに位置しており、警視庁の中では6%しか存在していません。
逮捕状の請求が可能で、現場の第一線で活躍するというよりも、現場指揮を執る立場です。
ノンキャリア組で警部にまでなれば、出世頭と言ってもよいでしょう。
警部として6年以上の勤務実績を有していれば、警視へ昇任するための選考を受ける資格が得られます。(必要であれば昇任試験も併せて実施)
アニメ『ルパン三世』の銭形警部や、ドラマ『相棒シリーズ』の主人公・杉下右京の階級は、警部です。
警視
「警視」は、警察署では署長、本部では課長を務め、警視庁内に2.7%しかいない階級です。
警視以上の階級になると、警察学校長に任命されることも。
基本的に昇任試験ではなく、「選考」というプロセスを踏んで警視へと昇任します。
選考については、本記事内の「昇任する方法とプロセスを紹介」の欄にて詳しく解説します。
警視正
「警視正」以上の階級は、国家公務員(地方警務官)のキャリア組にしかなれず、仮にノンキャリア組である地方公務員が昇任した場合でも、国家公務員扱いに変わります。
警察本部の部長を務め、キャリア採用で15年ほど、準キャリア採用で25年ほどで昇任するといわれています。
こちらも昇任するのに「選考」が必要です。
ドラマ『踊る大捜査線』の登場人物でもあり、スピンオフ作品映画『交渉人 真下正義』の主人公・真下正義の階級は、警視正です。
警視長
「警視長」はノンキャリア組の最高位ですが、警視庁に入庁してもごく少数の人しかなれず、県警だと1名しかなれない階級です。
キャリア組だとしても、昇任するまでに採用から20年以上かかりますし、成績が優秀でないと選考を受けられません。
全国の定員は594人で、警察本部の本部長や、警視庁の部長、警察庁の課長などを務めます。
警視監
「警視監」まで高位の階級になると、準キャリアでも昇任する人は限られており、キャリア採用でなければなるのは非常に大変です。
全国の定員は38人とごく少人数しかおらず、警視庁では副総監、警察庁では次長や官房長を務めます。
映画『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』における室井慎次の階級が、警視監です。
警視総監
「警視総監」は警察の中で最高位の階級で、警視庁の長でもあり、全国に1人しかいません。
警視総監に任命されるには、国家公安委員会からの選考、東京都公安委員会および内閣総理大臣からの昇任が必要です。
警視庁・全国の警察本部の事務を統括し、全警察職員の監督をします。
昇任する方法・プロセスを詳しく紹介
警察官が階級を上げるためには、「昇任試験」と「選考」の2つの方法があります。
昇任試験があるのは「警部」までで、「警視」以上の階級になるには、選考を受けなければなりません。
それぞれどのようなプロセスを踏んで昇任することになるのか、詳しく解説していきます。
昇任試験を受けて合格する
昇任試験を受けるには、まずは階級別に設けられた基準をクリアしなければなりません。基本は必要な勤続年数をクリアすればいいのですが、自身の採用区分ごとに必要な勤続年数が異なるため、注意しましょう。
柔道や剣道などの段位が高い場合や、逮捕術・拳銃操法に優れる場合など、特殊な技能を持っている場合も、基準を満たしたことになります。
昇任試験は年に一度開催され、一般常識・警察法規・警察実務等についての筆記試験、論文試験、教練・点検・零式・逮捕術等の術科、面接がおこなわれます。
難易度は非常に高く、階級が上がるごとに落ちてしまう人が増え、昇任自体を諦めてしまう人が出てくるほどです。
選考を受ける
「選考」は、基準となる勤続年数をクリアすることと、上司からの推薦が必要です。
成績が優秀な順に受けることができ、勤務経歴・勤務実績を総合的に考慮して評価されます。
選考を受けるところまで昇任できるのは、ほとんどがキャリア組です。
警察官として出生してきたいなら、国家公務員としてキャリア採用を目指すのが得策でしょう。
まとめ
警察官として働くうえで「階級」は、ただ単に仕事内容を分けるだけではなく、その人の人生に強く影響を及ぼします。
もし今、あなた自身が「警視庁採用試験を受験して警察になりたい」と考えているのと同時に、「できるだけ早く出世したい」とも考えているのなら、大卒程度の受験区分を選ぶべきだとわかったはずです。
このように、将来のビジョンをはっきりしておくことは、今後の身の振り方や努力の仕方、目指す方向まではっきりとさせます。
この記事を読んだことをきっかけに、今後の人生をより良くするためにも、ぜひもう一度自身のキャリア形成について、深く考えてみてはいかがでしょうか。
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